「最近、なんとなく目が見えづらくなった」
「車のライトがやけに眩しく感じる」
「細かい文字がぼやけて読みづらい」
40代を過ぎたころから、このような目の変化を感じて不安に思っている方はいませんか?もしかしたら、その症状は「白内障」のサインかもしれません。
白内障は、加齢とともに誰にでも起こりうる目の病気です。しかし、実は“なりやすい人”にはいくつかの特徴があり、生活習慣を見直すことで進行を遅らせることも可能です。
この記事では、白内障に関心のある方や、ご自身の目の健康が気になる方に向けて、以下の内容を詳しく、そして分かりやすく解説していきます。
- そもそも白内障とはどんな病気か
- 白内障になりやすい人の特徴や原因
- 発症しやすい年齢と年代別のリスク
- 今日から実践できる予防策
- 白内障になってしまった場合の治療法
この記事を最後まで読めば、白内障についての正しい知識が身につき、ご自身の目の健康を守るための具体的な行動がわかるようになります。ぜひ、大切な目のために、一緒に学んでいきましょう。
白内障とは?目のレンズが濁る仕組み
まずはじめに、「白内障」がどのような病気なのかを理解しておきましょう。
私たちの目の中には、カメラのレンズのような役割を持つ「水晶体(すいしょうたい)」という透明な組織があります。水晶体は、外から入ってきた光を集め、厚みを変えることでピントを合わせる働きをしています。私たちが遠くのものや近くのものをはっきりと見ることができるのは、この水晶体のおかげです。
白内障とは、この水晶体が白く濁ってしまう病気です。透明だったレンズが曇りガラスのようになってしまうと、光がうまく網膜まで届かなくなります。その結果、以下のような様々な症状が現れるのです。
水晶体が濁る主な原因は、水晶体に含まれる「クリスタリン」というタンパク質が、加齢や様々な要因によって変性してしまうことです。卵の白身(タンパク質)が、熱を加えると白く固まって透明に戻らなくなるのと同じような現象が、目の中でゆっくりと起こっているとイメージすると分かりやすいかもしれません。
【セルフチェック】もしかして?白内障の主な症状リスト
白内障の症状は、ゆっくりと進行するため、初期段階では自覚しにくいことも少なくありません。以下のような症状に心当たりがないか、チェックしてみましょう。
- 目がかすむ・全体的に霧がかかったように見える:最も代表的な症状です。視界が白っぽくぼやけます。
- 視力が低下した:眼鏡やコンタクトレンズの度数を変えても、見え方が改善しない場合があります。
- 光をまぶしく感じる(羞明:しゅうめい):太陽光や照明、対向車のヘッドライトなどが以前より眩しく感じられます。
- 暗い場所で見えにくくなる:明るい場所と暗い場所での見え方の差が大きくなります。
- 物が二重、三重に見える(単眼複視):片目で見ても、物がダブって見えることがあります。
- 色の見え方が変わる:水晶体が黄色っぽく濁るため、全体的に黄みがかった色に見えることがあります。
- 一時的に近くが見えやすくなる:白内障の進行過程で水晶体の屈折力が変化し、一時的に老眼が改善したように感じることがあります。
これらの症状が複数当てはまる場合は、一度眼科で詳しい検査を受けることをお勧めします。
あなたは大丈夫?白内障になりやすい人の9つの特徴
白内障は誰にでも起こりえますが、特に発症リスクが高い、いわば「なりやすい人」がいます。ご自身やご家族が当てはまるか、確認してみましょう。
1. 加齢(最も大きな原因)
白内障の最大の原因は「加齢」です。年齢を重ねるにつれて、誰でも髪が白くなったり、肌にシワが増えたりするのと同じように、目の中の水晶体も老化していきます。これを「加齢性白内障」と呼び、白内障の実に9割以上を占めます。
個人差はありますが、早い人では40代から始まり、50代で約半数、60代では7割以上、そして80代になると、ほとんどの人が何らかの程度の白内障を発症していると言われています。加齢は誰にも避けられないため、白内障は目の老化現象の一つと捉えることができます。
2. 紫外線を長年浴びている
紫外線は、肌の日焼けやシミの原因となるだけでなく、目にも深刻なダメージを与えます。長年にわたって紫外線を浴び続けると、そのエネルギーが水晶体に吸収され、活性酸素が発生します。この活性酸素が水晶体のタンパク質を酸化させ、変性を引き起こすことで、白内障の発症を早めてしまうのです。
特に、以下のような方は注意が必要です。
- 屋外での仕事(農業、漁業、建設業など)に従事している方
- マリンスポーツやスキー、ゴルフなど、屋外での趣味を長年続けている方
- 日頃からサングラスをかける習慣がない方
3. 糖尿病を患っている
糖尿病の患者さんは、そうでない人に比べて若い年齢で白内障を発症しやすいことが知られています。高血糖の状態が続くと、ブドウ糖が「ソルビトール」という物質に変換されて水晶体の中に蓄積します。このソルビトールが水晶体の浸透圧を変化させたり、タンパク質の変性を促したりすることで、濁りを生じさせます。これを「糖尿病白内障」と呼びます。
血糖コントロールが良好でないほどリスクは高まるため、糖尿病の患者さんは内科での治療と並行して、定期的な眼科検診が非常に重要です。
4. アトピー性皮膚炎がある
重症のアトピー性皮膚炎の患者さん、特に20代〜30代の若い世代に合併する白内障を「アトピー白内障」と呼びます。発症のメカニズムは完全には解明されていませんが、目の周りの皮膚炎によるかゆみで、目をこすったり叩いたりする物理的な刺激が水晶体にダメージを与えることが一因と考えられています。また、治療に使用されるステロイド薬の影響も指摘されています。
進行が非常に速いケースもあるため、アトピー性皮膚炎の患者さんは、見え方に変化を感じたらすぐに眼科を受診することが大切です。
5. ステロイド薬を長期使用している
アトピー性皮膚炎の治療だけでなく、喘息、リウマチ、その他の自己免疫疾患などの治療でステロイド薬を長期間使用している場合、その副作用として白内障のリスクが高まることがあります。これは「ステロイド白内障」と呼ばれます。
飲み薬だけでなく、点眼薬、吸入薬、塗り薬など、あらゆるタイプのステロイド薬が原因となりえます。自己判断で薬を中断するのは危険ですが、ステロイド治療を受けている方は、定期的に目のチェックを受けるようにしましょう。
6. 喫煙の習慣がある
喫煙は、体内に大量の活性酸素を発生させ、全身の老化を促進します。「百害あって一利なし」と言われますが、目も例外ではありません。タバコに含まれる有害物質が血流に乗って全身を巡り、水晶体の酸化ストレスを高めます。その結果、タンパク質の変性が早まり、白内障の発症リスクが2〜3倍に高まるという研究報告もあります。
喫煙は、白内障だけでなく、加齢黄斑変性という別の深刻な目の病気のリスクも高めます。目の健康を考えるなら、禁煙は非常に有効な手段です。
7. 目に怪我をした経験がある
スポーツ中のボールが目に当たる、転んで目をぶつけるなど、目に強い衝撃が加わったことが原因で発症する白内障もあります。これを「外傷性白内障」と呼びます。怪我の直後だけでなく、数年経ってから発症することもあるのが特徴です。目を強く打った経験のある方は、覚えておくと良いでしょう。
8. 遺伝的な要因
家族や血縁者に若くして白内障になった方がいる場合、体質的に白内障になりやすい可能性があります。ただし、白内障のほとんどは加齢によるものであり、遺伝が直接的な原因となるケースは稀です。生活習慣など環境的な要因が大きいと考えられています。
9. その他の要因
上記以外にも、以下のような要因が白内障のリスクを高めることがあります。
- 他の目の病気:ぶどう膜炎など、目の中で炎症が続く病気。
- 放射線治療:頭部などへの放射線治療を受けたことがある場合。
- 栄養不足:抗酸化物質が不足するなど、極端に偏った食生活。
- 先天性:生まれつき水晶体に濁りがある場合(先天白内障)。
白内障は何歳から発症しやすい?年齢別の進行度
白内障の最大の原因は加齢です。では、具体的に何歳くらいから注意が必要なのでしょうか。年代別の一般的な傾向を見ていきましょう。
- 40代:初期変化が始まる時期です。水晶体の濁りが少しずつ現れ始めますが、自覚症状を感じることはほとんどありません。この時期から予防を意識することが大切です。
- 50代:発症する人が増え始め、視力に影響が出始める方もいます。「老眼が進んだかな?」と思っていたら、実は初期の白内障だったというケースも少なくありません。
- 60代:多くの方で白内障が進行し、「目がかすむ」「まぶしい」といった自覚症状をはっきりと感じるようになります。日常生活に不便を感じ、治療を検討し始める方が増える年代です。
- 70代以上:さらに進行が進み、視力が大きく低下します。多くの方が手術(後述)を受けることで、クリアな視界を取り戻しています。80代になると、程度の差こそあれ、ほぼ100%の人に白内障が見られます。
このように、白内障はゆっくりと、しかし確実に進行する加齢現象です。40歳を過ぎたら、誰もが「自分ごと」として捉える必要があります。
今日から始められる!白内障の進行を遅らせる5つの予防策
残念ながら、一度濁ってしまった水晶体を元に戻す薬は、現在のところ存在しません。しかし、生活習慣を見直すことで、白内障の発症や進行を遅らせることは可能です。今日からできる予防策を5つご紹介します。
1. 紫外線対策を徹底する
最も効果的な予防策の一つが、紫外線から目を守ることです。
- UVカット機能付きのサングラスや眼鏡を着用する:レンズの色が濃いだけでは意味がありません。「紫外線透過率1%以下」「UV400」などの表示があるものを選びましょう。
- つばの広い帽子や日傘を活用する:サングラスと併用することで、さらに効果的に紫外線をカットできます。
曇りの日でも紫外線は降り注いでいます。外出時には常に紫外線対策を心がける習慣をつけましょう。
2. バランスの取れた食生活を心がける
体内の酸化を防ぐ「抗酸化作用」のある栄養素を積極的に摂取することが、水晶体の老化防止につながります。特に意識したい栄養素と、それを多く含む食品は以下の通りです。
- ルテイン・ゼアキサンチン:強力な抗酸化作用を持ち、紫外線を吸収して目を守る働きがあります。ほうれん草、ケール、ブロッコリーなどの緑黄色野菜や、卵黄に多く含まれます。
- ビタミンC:水晶体にもともと多く含まれる抗酸化ビタミンです。ストレスや喫煙で失われやすいため、意識して補給しましょう。パプリカ、ブロッコリー、キウイフルーツ、柑橘類などに豊富です。
- ビタミンE:「若返りのビタミン」とも呼ばれ、強い抗酸化作用があります。ナッツ類、アボカド、植物油、うなぎなどに多く含まれます。
これらの栄養素をサプリメントで補う方法もありますが、まずは様々な食材を組み合わせたバランスの良い食事を基本とすることが大切です。
3. 禁煙を実践する
前述の通り、喫煙は白内障の強力なリスク因子です。禁煙することで、白内障だけでなく、全身の健康状態を改善できます。ご自身の力だけで禁煙するのが難しい場合は、禁煙外来などで専門家のサポートを受けることも検討しましょう。
4. 生活習慣病の管理と予防
糖尿病や高血圧は、白内障のリスクを高めるだけでなく、網膜症など他の重大な目の病気の原因にもなります。適度な運動、バランスの取れた食事、適切な体重管理を心がけ、生活習慣病を予防しましょう。すでに診断されている方は、医師の指示に従って適切な治療を継続し、良好なコントロールを維持することが目の健康を守ることにも直結します。
5. 定期的な眼科検診を受ける
40歳を過ぎたら、自覚症状がなくても1〜2年に1度は眼科検診を受けることを強くお勧めします。検診では、視力検査だけでなく、細隙灯顕微鏡検査(さいげきとうけんびきょうけんさ)などで水晶体の状態を直接観察するため、ごく初期の白内障も発見できます。
早期に発見できれば、その後の進行度合いを把握し、適切なタイミングで治療を検討することができます。緑内障など、自覚症状のないまま進行する他の病気の早期発見にもつながります。
もし白内障になってしまったら?主な治療法について
予防に努めていても、加齢とともに白内障が進行することは避けられません。もし白内障と診断され、生活に不便を感じるようになった場合の治療法についても知っておきましょう。
初期段階:点眼薬による進行予防
ごく初期の白内障で、自覚症状がほとんどない場合は、進行を遅らせることを目的とした点眼薬が処方されることがあります。ただし、これらの薬はあくまで進行を緩やかにするものであり、濁った水晶体を透明に戻したり、視力を回復させたりする効果はありません。
進行した場合:手術が唯一の根本的な治療法
かすみや視力低下によって、読書や運転、仕事など、日常生活に支障が出てきた場合、根本的な治療として「手術」が検討されます。
現在、白内障の手術は非常に安全性が高く、広く行われています。一般的には「超音波水晶体乳化吸引術(ちょうおんぱすいしょうたいにゅうかきゅういんじゅつ)」という方法で行われます。
- 目の黒目に近い部分を数ミリほど小さく切開します。
- 超音波を発する器具を挿入し、濁った水晶体を細かく砕いて吸引します。
- 水晶体が入っていた袋(水晶体嚢)の中に、人工の「眼内レンズ」を挿入します。
この眼内レンズは、一度挿入すれば交換の必要は基本的にありません。手術は片目ずつ行い、多くは日帰りで可能です。手術を受けることで、濁りのないクリアな視界を取り戻すことができます。
まとめ:白内障は誰にでも起こる病気。早期発見と予防で大切な目を守ろう
今回は、白内障になりやすい人の特徴や原因、予防策について詳しく解説しました。
最後に、この記事の重要なポイントをまとめます。
- 白内障は、目のレンズである水晶体が濁る病気で、最大の原因は加齢です。
- 紫外線、糖尿病、アトピー、喫煙などは白内障のリスクを高めます。
- 80代までには、ほとんどの人が白内障の状態になります。
- 予防には紫外線対策、抗酸化物質の摂取、禁煙、生活習慣病の管理、定期的な眼科検診が有効です。
- 進行して生活に不便が出た場合は、手術によってクリアな視界を取り戻すことが可能です。
白内障は、多くの人にとって避けられない目の老化現象ですが、正しい知識を持って対策をすれば、その進行を遅らせ、快適な見え方を長く保つことができます。
「年のせいだから」と自己判断せず、少しでも見え方に変化や不安を感じたら、ぜひお近くの眼科に相談してみてください。早期発見・早期対応が、あなたの目の健康を守るための最も大切な一歩です。